亜矢のインタビュー その4

亜矢のインタビュー その5

(※2003年、Yahoo!ミュージックに掲載されていた記事です。
HOT EXPRESSの亜矢のページには何故か掲載されていません)

『亜矢』 SPECIAL INTERVIEW 「周りからは「すごい重い」とか、「暗い」とかって思われがちですけど、実は自分なりの光を見ているんですよね。」 (HOT EXPRESS)



 重い、暗い、恐い・・・こういった要素を持った音楽は大衆から敬遠されやすい。今回、7ROCKS ALBUM「禁じられた歌」のリリースに合わせて、二度目のインタビューに応えてくれた"亜矢"が作り出す音楽も、ある部分でそれにあてはまる。自ら「禁じられた歌」と言い切っているぐらいだ、本人もそのことはよーく分かっている。ただ勘違いしてほしくないのは、彼女の音楽はリアルさを追究しているだけであり、ダーティでネガティヴな想いを歌い叫ぶスタイルに自己陶酔しているわけではない。そう、本当のことを歌っているだけなのだ。
 "怒り"や"絶望"の裏側には、"愛"や"希望"が必ずあるように、彼女の音楽もまた同じことが言える。バリバリのグランジ直系サウンドを掻き鳴らしながら、そんなことを感じさせるアーティストは滅多にいない。特に今作「禁じられた歌」は、そんな彼女の"核(コア)"が堂々と顔を見せている作品であるため、亜矢の本質がとても感じやすい。"核(コア)"を今のタイミングで作品化したのには、一言二言では語りきれない理由があるのだが、その辺はこのインタビューでの彼女の言葉を読みながら知っていただければと思う。



-1st ALBUM「戦場の華」以来のインタビューなので、お会いするのは約11ヶ月ぶりになるんですが、休まず走り続けてきたって感じですか?この一年は。

亜矢(以下A):そうなんですけど、自分をふと見直す機会があったりして、それで気持ちがすごく楽になったり。少しずつではありますけど、成長し続けてるなぁと。


-ふと見直す機会・・・というのは何だったんですか?

A:あ・・・アルコール中毒になりまして(苦笑)。病院に入院してたんですけども、そこで改めて自分がやるべきこと、やりたいこと、進むべき方向というのを考えさせられたんです。そういう機会があって今回の作品をドーン!と作れたというか。


-もう今は大丈夫なんですか?

A:大丈夫です。普通に飲めるぐらいには。ウーロン茶を織り交ぜながら(笑)。


-なるほど。それで話が繋がった曲がありました。今作「禁じられた歌」に収録されている「SADISM」、"アルコホリックですけれど"というフレーズが出てきますよね。これは思いっきり自分のことを歌ってたわけですね?

A:はい、そうです。


-その辺は後で詳しく聞かせてもらいます。そんな背景がありながらも、この一年は様々なシチュエーションでライヴをやっていたというのが、僕の印象なんですけど、最初に見たのが去年の5月のclub asiaの初ワンマン。僕が一番最初に見たライヴになるんですけど、やっぱりワンマンは色々やれて楽しかったんじゃない?

A:今思うと、もう頭の中真っ白でしたね。無我夢中すぎて、ワンマンを味わった気がしないんですね・・・実は。


-無我夢中でやって気が付いたら終わってた・・・。

A:うん、終わってた。そうですね。で、気が付けばサマソニのステージに立ってるし、矢沢さんのオープニングアクトもやらせていただいて・・・。なので、今は色んなシチュエーションであっても、「自分らしくステージに立ちたい」ってすごく思い始めてて。もっと自分の歌を楽に歌っていきたい。今までが無我夢中で爆走し過ぎたため、走ってる先も見えなくなったこともありましたし。そういった経験を経て、これからのライヴがすごい楽しみ。もっと自分を磨けていけるだろうし。


-去年のclub asiaの初ワンマンで「ビッチ」のカバーを歌ったじゃないですか?メレディス・ブルックスも結構好きなの?

A:えぇ。特に「ビッチ」って曲はすごく好きで、よくリハーサルで弾き語りをしてて、そしたら周りが合わせてきて、「やっちゃおうか?」っていうノリで。


-あと、『SUMMER SONIC 2002』のFACTORY STAGEのトップバッターを務めましたが、巨大なロックイベントのステージに立つっていうのはどんな気分だったの?

A:うーん・・・色んなアーティストのライヴを見に来てるわけじゃないですか、お客さんは。その中の一人のアーティストとして立てたことが、自分が本当に飛べる高さのハードルじゃない場所に飛んでしまったような・・・うん。そこでどれだけの人に"自分"を印象づけられたのか・・・。あの時も無我夢中だったから、サマソニに出てるっていう・・・実感が今でもないですね。夢の中の一部だったような。


-しかもトップバッターということで、朝11時ぐらいでしたよね、出番が。

A:朝5時に幕張集合だったんです!


-(笑)。難しいシチュエーションだったんだろうなーとは思ってたんですけど。どういった経緯で出演することになったんですか、サマソニは?

A:実は今の事務所のマネージャーの方が主催側にすごい大推薦してくれまして。当時はその事務所には所属してなかったんですけど。で、「出れたら良いよね!」っていう話だけはしてたんですけど、まさか本当に決まるとは思ってなくて。


-しかもデビューの年でしたからね。

A:なんか「裏で金を積んでるんじゃないか?」とかっていう、話まで流れたくらい(笑)。そんなの、もちろん無かったんですけど。サマソニのイベンターの社長さんも「ライヴ良かった」って言ってくれて。


-あの日は自分のライヴが終わった後に、他のアーティストのライヴを覗きに行ったりはしたの?

A:あ、はい。PUFFYとか見たり(笑)。あとは、自分を昔からずっと応援してくれてるファンの子たちと色々話したり、ベロンベロンに酔っぱらって。


-あの会場でですか(笑)?

A:はい。


-千葉マリンスタジアムには見に行かなかったの?

A:行く予定だったんですけど、地面に座って酒飲んでたら根っこが生えちゃって、気が付いたら終わってて・・・(笑)。


-サマソニの後には矢沢永吉さんのオープニングアクトという、これまたすごい大仕事を務め上げてしまいましたけど。

A:あの話は矢沢さんのツアマネの方や矢沢さんの事務所の方達が、すごく私の曲を気に入って下さってて・・・「いいじゃん!」(矢沢さん風に)って。


-(笑)

A:これもまた私の知らないところで話がどんどん展開していて、「矢沢さんの30周年記念コンサートのオープニングアクトが決まったよ!」って言われたときは、「来月じゃん!?」って感じで(笑)。でも、「矢沢さんのステージに立ちたい!」と、そう思ったキッカケがひとつあるんです。私が北海道から上京して、音楽のレールに乗せてくれた前の事務所の社長が亡くなったんですけども、彼がすごい矢沢さんの大ファンで、「亜矢の"矢"は矢沢の"矢"だ」って言う、いつもよく分かんない口癖を言う人で(笑)。


-それぐらい矢沢さんが好きな方だったんですね。

A:そうなんです。それで、私が一人でデモテープを作ってソロになるとき、私の一生懸命頑張ってる姿を見て、「よし!じゃあ、亜矢頑張ってるから、ライヴに連れてってやるよ。俺がおごってあげるから行こうよ」って誘ってくれたんです。それで生まれて初めて行った武道館のライヴが矢沢永吉さんだったんですよ。なので、オープニングアクトが決まった時、私が今の音楽の道に入れたひとつのキッカケとなった社長への恩返し、最高の供養が出来るなって・・・本当はその亡くなった社長に一番見て欲しかったんですけど。


-うん。じゃあ、運命的なモノも感じるぐらいの出来事だったというか?

A:そうですね。


-矢沢さんとは実際に話す機会とかあったんですか?その日っていうのは。

A:えぇ、ありました。ライヴ集終了後の打ち上げ会場で「あなた方みたいな若い人たちが、これからどんどん頑張って欲しい!」ということを言って下さいましたね。


-どんな人でした?

A:ステージで見せるあの大きい空気、オーラを持ちつつも、実はすーっごい腰の低い方なんですよ。真っ直ぐ目を見て話してくれる、うん。矢沢さんがなぜこんなにすごいのが分かるような気がしました。初めて私、ライヴで涙が出てきたんですよ、矢沢さんのライヴを見て。あれだけ同性の男の人に愛されながら、支持されながら、ドーンッ!と、立っている姿になんか憧れちゃいましたね。


-大御所との共演と言えば、PERSONZとも一緒にライヴイベントへ参加しましたよね。JILLさんにかなり気に入られていたようですが。

A:実は私、中学生の時とかPERSONZとかも聴いてたんで、不思議な気持ちでした。あの時はやっぱり中学生の目でJILLさんを見てたり、「同じステージに今立ってるんだ。じゃあ、
カッコイイステージを見て欲しいな」とか密かに思いながらも、実際に会ってしまうと、なんかヘビに睨まれたカエルのような・・・(笑)


-すごいですよね、本当変わらないっていうか。

A:うん、パワフルだった。やっぱり何歳になっても変わらないPERSONZ、JILLさんがそこにいて。


-ライヴイベントで色んな先輩アーティストとツアーで回ったりすると、勉強になる部分は大きい?

A:すっごい大きいですね。それぞれ自分たちのプライドみたいなモノや、譲れないモノとか、自分らしさとか持っているので。それで、「私はじゃあどうなんだろう?」と考えさせられたり、自分を見る鏡だったりもしますね。


-なるほど。あと、昨年8月30日の三軒茶屋HEAVEN'S DOORでは、アコースティックライヴを披露しましたよね。アコースティックはデビュー前とかもやってたの?

A:弾き語りで米軍基地とか、渋谷の駅前でやったことはありますけど、バンド編成のアコギライヴはやってませんでしたね。あのスタイルになると、ステージングよりも、やっぱり聴かせる感じになるので、必死ですね。まだ動いてる方が気が紛れますけど、みんな黙って聴いちゃうので、なおさら。


-あの日はベット・ミドラーの「THE ROSE」を歌ってくれましたけど、あの曲もずっと好きで?

A:えぇ、リハーサルでは必ず毎回やってます。今度またワンマンとかで、ドラムインでやりたいと思います。


-それは楽しみですね!で、2003年の一発目も三軒茶屋HEAVEN'S DOORでライヴを行いましたが、あの日、ライヴを見終わった後に聞いたんですけど、二日前ぐらいからインフルエンザで倒れてたんですよね?

A:そうなんですよー!私だけじゃなくてバンドメンバーもみんなライヴ開始直前まで下痢だったりして、みんなで「具合悪い、具合悪い」って言いながら(笑)。しかも、久しぶりのライヴだったんで、みんなで緊張しちゃってて・・・「これじゃイカンな」と、またケツを自分で叩いたような。


-でも、ステージに立ってマイクを持ってしまえば、スイッチが切り替わるみたいなところってあるんじゃないですか?見てた側としては、そんなことを全く感じさせなかったんで。

A:フッと入るんですよ。どこかでそれを冷静に見ている自分がいて。「今、シクった」とか(笑)。ただ、あの日のライヴは不完全燃焼で、妙な残骸だけが残っちゃって。しばらくその後部屋から出れませんでした、自宅から。


-引きこもりに?

A:また、引きこもりに(笑)。


-あと、2月26日の新宿LIQUID ROOMで行ったライヴですが、自分でも成長や自信って感じてたりします?僕はかなりあの日のライヴを見ていて感じたんですが。

A:ありますね。ファンの子が少しずつ増えていたり、拍手が大きくなっていたりもしますし。あと、純粋にその日のステージで楽しもうという気分になれていること。今まではお客さんとステージの間に、柵のようなモノを自分で作っていたような気がしてて。それが向こうから聞こえてくる拍手だったり、声援であったりが壊してくれたというか、うん。自分がやってて楽しくないと、見てる人も楽しくなれないだろうし。自分が力を入れてしまうと、見てる人も疲れてしまう。だからもっと力を抜いて、純粋に楽しめたらと最近思い始めてますね。


-先日のHEAVEN'S DOORでもLIQUID ROOMでも、何曲かこの7 ROCKS ALBUM「禁じられた歌」の収録曲をリリースに先駆けて披露してくれましたが、今作を作る上で"ライヴ"っていうのは意識しました?

A:しましたね。今までは結構アグレッシブといってもミディアム・テンポな感じの曲が多かったんですけど、そればかりだと、音はヘヴィでも、それほど速くはないからタテノリしづらいというか。だから、「イントロから体が熱くなるような曲をやりたいな」と思って。やってる方も楽しいですしね。


-アルバム自体はいつ頃から作り始めたんですか?

A:レコーディングは去年の10月ぐらいから始めてて、約3ヶ月で全部音を録り終えたんですけど、曲自体は4年ぐらい前からあったモノもあります。デモテープで、ワンコーラスだけ作ってあって。それを自分の中でアレンジを繰り返していいきながら完成形にして。


-なるほど。それは、どの曲だったりするんですか?

A:「禁じられた歌」、「SADISM」、「アルク*ベイビーズ」はそうですね、昔から自分の中で取っておいたものです。


-今回のレコーディングの雰囲気ってどんな感じだったんですか?

A:今回はセルフプロデュースで、全ての決定権を私が持ってみたんですけども、楽しかったです。やっぱり、一番身近にいる、今までライブでやってきたバンドのメンバーとのセッションはやりやすいですね。それで、本当にライヴ感覚で、今回はみんなで「せーの!」で合わせてやったんですよ。ちょっと間違えちゃったところは、あとで直して(笑)。


-(笑)

A:で、最初っから最後まで全部私が、「ドラムのキックの音、これがいい!」、「スネアもっと堅くして」とか。ギターの音とかは、何回もいろんな音出しては考えて、その時にグッときた「これだ!」っていう音を全て自分が選んで。ベースラインもギターソロも、私が「OK」って言うまで、みんな何回も弾いてくれたり、自分も4本の指に水膨れを作りながらギターを弾いたりとか。"渾身"って言ったらちょっと強すぎますけど、自分が全て納得いくまで、もう朝の7時までかかっても煮詰めて満足いくモノを作りましたね。日本で出来る最大のメリットって、やっぱり自分のホームグラウンドで思う存分やれるところなので。


-あと、アルバム全体のコンセプトって決めてたの?

A:ないです。レコーディングで一気に約20曲程、ガーッと録り始めて。その中から最も今の自分に近い心境だったり、自分が最初に聴いて欲しいと思った曲を選んでいるうちに、最初はマキシシングルの予定だったんですけど、どんどん曲が増えてって、結局7曲も(笑)。"今の自分"が最も良く表れているモノを掻き集めたら、この7 ROCKS ALBUM「禁じられた歌」が完成しました。


-"7 ROCKS ALBUM"ってなかなか無い言い方ですけど、マキシシングルとしては多すぎるし、ミニアルバムって言うとなんかイメージ的に?

A:そう。ミニアルバムっていう響きが本当にイヤで。あと、ひとつひとつの楽曲に「私がどうしてこの曲を作ったのか?」っていう思い入れがありまして、一曲一曲存在感を持たせたかったので、敢えて"7 ROCKS ALBUM"という言い方をしようと。


-なるほど。この「禁じられた歌」っていうタイトルには、どんな思いを込めてるの?一曲目のタイトルにもなってますけど。

A:色んな意味が含まれてるんですけど、こんな殺伐とした今の世の中、やっぱり人の心を明るくする音楽って励まし系であったり、「みんな頑張ろうよ!」みたいな曲だったり、私からしてみれば、ちょっとサムい感じの・・・(笑)。


-(笑)。

A:そんな状況下で、私の楽曲は重いとか、今の時代に向いてないんではないかとか、ロックは今流行らないとか、そう思われがちなんですけど、そんな中でより濃いモノを敢えてぶつけていく・・・だから「禁じられた歌」。あと、1曲目「禁じられた歌」そのものに込めた意味としては、堕落していく・・・それを許せない自分と、ボロボロになっていく自分がいるんですけど・・・例えば堕落していく行為として、酒やドラッグだったり、売春だったり、そういうモノで身を滅ぼしていくわけじゃないですか。でも、「そんな自分も結局自分なんだから、そんな自分も許して受け入れて、愛してあげようよ。」っていう想いもありつつ、片一方では「そんなダメな自分を叩き壊してしまえよ、粉々になったって、どれも全部自分だから。それでまたやり直せばいいよ」っていう・・・そんな意味合いが込めてあります。


-そういう部分で亜矢さん自身、葛藤したりするのは多かったりする?

A:はい。すぐ・・・本当に自分をとことん追い詰めて。今まではそういう自分がもう許せなかった、うん。自傷したり、酒に逃げ込んでしまったり、物を壊したり、逃げてしまう、現実から逃げてしまう自分がもう嫌で嫌で。それこそ、「死にたい。でも死にたくない。誰か殺して欲しい。でも生きたい」っていうレベルの葛藤まで陥ったりしていましたね。


-でも、そういう葛藤を曲や詞にすることによって、救われる部分ってあるんじゃないですか?

A:うん。ロックミュージックって私を素にもしてくれるし、強くしてくれるモノでもあるんで。「音楽自体がもう自分の一部」になっているというか。


-あと、「禁じられた歌」の曲の中で"GO!!!"ってデス声気味にシャウトする部分が鳥肌モノだったんですが・・・。

A:(笑)。リハーサル中はスリップノット級に叫んだりよくしてます(笑)。


-その領域ですよね、あの声は。

A:うん。「もう堕ちるんなら、堕ちていけよ!」っていう意味と、「叩き壊せー!」っていう想いを込めて叫ばせていただきました。


-続いて、2曲目の「SHELTER」なんですけど、この曲はちょっと前からライヴでは披露していましたが、いつ頃作った曲なの?

A:1年ぐらい前ですかね。この曲はアルコール中毒で病院にブチ込まれて、ハッと我に返してくれたときの本当の心境や感情を「音にしよう」と思って作ったんですけど、頭に浮かんでくるままに作っていったら、こんな曲になりました。「コントロール出来ない自分ほど怖いモノはない」、自分がそんな状況になって初めて知ったことを歌ったというか。自分が何をやってるのか、何がしたいのか全く分かんない状況になってしまって、それを薬で押さえつけられる、拘束服で押さえつけられる。そんな状況に陥って、そんな自分ほど怖いモノはないなって。今までは自分の殻の中で、内の中で叫んでたんですよね、「助けて欲しい」、「自分なんて大嫌いだ」って。でも、曲にするとそれが内から外に出ていった。こんな気持ち良いことがあったのかって。それを音にしました。内の中で叫んでいたモノが、自ら入り込んだ"SHELTER"という殻の中から出ていくイメージ。内蔵をさらけ出したような歌ですね。


-続いて、「SADISM」。イントロから入るサイレンっぽいリフが、一度聴くと頭から離れませんね。あれは亜矢さんのアイデア?

A:はい。全部酔っ払った勢いで作りました(笑)。あのサイレンはパトカーで、そのパトカーから車で逃げ回るイメージ。そのスリル感を恋愛に例えて、スリリングでアグレッシブな駆け抜けるような恋愛の歌をちょっと作ってみたいなって。で、酔っ払った勢いでそのまま(笑)。自分の中では過去最速の曲でもありますし、この曲のギターソロとか、私笑いながら弾いてた(笑)。楽しそうに。最後のノイズとかは、一人でブースの中入って満足いくまでギターを唸らせて、最後はガシャーン!って落としたり・・・追っかけてきたパトカーがカークラッシュしちゃう感じ。ダメダメな女がやっと手に入れたこの宝物=恋人を引き連れて逃げきるんです!この曲は作ってて楽しかったですね。


-続いて、4曲目のアコ-スティック・ギターを使った「アルク*ベイビーズ」。このタイトルはどういう意味?

A:単純に歩くベイビーです(笑)。


-この曲にはどんな思いを込めて歌っているの?

A:この曲はですね、私のお兄ちゃんが体に障害を持っていて、ハンデを持って生まれてきた故に友達も出来ず、職にも就けず、やれることが限られてるんですよ。そんな中でも自分らしく、そういう体に生まれてきたからといって、誰を責めるのでもなく、強く生きていく。そんな兄の姿勢と比べて私は、メジャーデビューまでして、ライヴやったり、ファンが出来たり、すごいミュージシャン達とシアトルでセッションできたり・・・みんなが羨むぐらいの人生を送りながらも、自分を好きになれないが為に、自分を愛せないし、これからやっていくことを不安に思ったり、惨めというか。そんな私から見て「どんな状況に生まれついても、自分らしく歩いていく、これ以上にカッコイイ生き方はないなー」と思いまして。幼い頃見た情景とかを織り交ぜながら・・・子供って無邪気じゃないですか。明日のことなんて、テストのことぐらいしか考えてないだろうし、何の不安もなく、ランドセル背負って帰っていく姿とか。「こんな私も昔は、純で、無垢な人間だったんだなぁ」と思いまして、何十歳になってもそういう無垢な気持ちで、自分の人生を自分らしく歩きたいという想いで作りました。


-なるほど。続いて、「CHAINS」。これもヘヴィな一曲ですが、この曲にはどんな想いを込めてるの?

A:私が物事を考えられなくなるときとか、切羽詰まったときって、鎖にグルグル巻きにされた状況と非常に近い感じがするんですよね。それを黙ってこらえて、鎖の中で自分を責め続けるのか・・・そんな鎖に縛られたまま何も行動せずに、鎖が錆びていくのを待ちながら、自分も一緒に朽ちていくのか。その鎖は誰も引きちぎってはくれない。自分の力で鎖をちぎって、自分が目指す場所へ向かっていこうっていう。その中で自殺をする人もいれば、生きたくても事故で死んじゃう人もいるし。死にたいのに結局死ねない人もいるだろうし・・・そういう運命の鎖のことを歌ってます。ここ数年、身近な人がたくさん亡くなっていった中で、悲しいなりにも学べたことは、自分の人生をどこで絶とうが、それが結局その人にとってのエンドなわけだから、いつか死んでしまうのかわからないんなら、どんな終わり方をしても自分らしく生きる事を全うすること。どうせいつか消え去るなら、運命の鎖を引きちぎって「もっと楽になろうよ」って。その楽になれる場所が天国でも現世でも、それは自分が選ぶことだから。そういう意味での"解放"の歌ですね。


-今作は英語のフレーズの多い曲が目立ったんですが、「絆」に関してだけは、"ざわめく菜の花"、"朽ちる亡き骸"といったフレーズといいメロディーといい、"和"の感じですね。

A:元々「絆」を作るときにイメージしたのが、"姥(うば)捨て山"で、そういうイメージを頭に浮かべて作ったので、どうしてもそれに合う言葉選びになったというか。


-この曲にはどんな想いを込めてるの?

A:私が数少なく持つ大切な絆のひとつを歌にしました。昔飼っていた犬が車にひき殺されてまして、生まれて初めて体が震えるぐらい"怒り"を感じて。子犬の時に北海道の地元のスキー場の近くでフラフラしてたのを見つけまして、家がスキー場の近くだったんですけど、帰ってくるとそいつが家の前にいたんですよ、なぜか。真っ白い犬だったんですけど、ピンク色の舌を出して、シッポをちぎれそうなぐらい振って、無邪気に。それで、どこか自分と近いモノを感じたので、すぐに「飼おう!」と思って。そしたら、犬って言葉が喋れない分、気持ちが伝わるというか、目を見てても何をして欲しいのか分かったり、そういうコミュニケーションの中で生まれた犬と人間の絆ってすごいと気付いて。そんな大切なモノを、全く知らない誰かによって突然命を絶ちきられてしまったんですけど・・・。そうやって突然命を奪われた犬だったけど、犬と人間に生まれた絆というものは、家族と同じように、切っても切れないモノだと思うんですね。それについて唄った曲です。わずか何年間だったけど、私がその犬の母親となって・・その死体を抱きながら、「夢を見なさい」って言っている。


-サウンド的にもそういった"怒り"とか"悲しみ"が出てますよね?

A:この曲に関しては、「ベースを私が弾きたい」って言って、怒りの如くベースに命かけて弾いてましたね(笑)。実はこの曲が一番思い入れがあったりします。


-あと、今思ったんですが、今作は前作「戦場の華」に比べても、テーマが多様ですよね?

A:病院に入院した以降書いた詞は、内から外に向かっているモノがすごく多いんです。「戦場の華」は、恋愛の歌がほとんどだったんですけど、気付いたんですよね、もっと私には歌いたい内容がある。ひとつの恋愛物語として片づけてしまう歌と、言いたいことがあって唄う曲っていうのは、やっぱり歌ってる気持ちが違う、歌った後も違う。「私、自分の歌を本当に歌ってるなー」って感じるんですよね。それがどんな内容であれ、「これが自分の歌を唄うってことなんだ」って。それでも、周りからは「すごい重い」とか、「暗い」とかって思われがちですけど、実は自分なりの光を見ているんですよね。あと、シャウトする意味がやっぱり内から出てくるモノでないと、本物じゃないというか。スタイルだけのフェイクだったら歌ってる側も、もちろん聴いてる側も何も感じない。


-今作はラストに「CANDLE STICK」、ベリコーズのカバーが収録されていますけど、ライヴでは何度か披露してますよね?

A:してますね。実はこの曲、以前にレコーディングは済んでたんですよ。ミックスも終わってたんですけども、今回もう一回録り直しました、全部。


-それはなぜ?

A:やっぱり今回はライヴ体勢でレコーディングをしたので、そのスタイルで録り直したかったんです。あと、この曲は「CANDLE STICK」っていう可愛らしいタイトルですが、実は内容的にはエグかったり・・・。歌ってて、なんか楽しくて、自分らしい曲だと思いましたね。


-今作「禁じられた歌」の収録曲について触れさせていただきましたが、今回の"7ROCKS ALBUM"は亜矢さんにとってどんな作品と言えますか?

A:今回の7曲は自分のコアな部分。自分らしいロック。一曲一曲に自分の想いや、その曲の存在の意味を封じ込めた作品。あまり一般大衆寄り、お茶の間的ではないかもしれませんけども、コアな自分を二枚目のフルアルバムを出す前に見せたかったんですね。で、そんなコアな自分の楽曲を聴いてもらって、「カッコイイ!」「ハマった!」って通過してくれたら、その間口がたとえ狭くても、その先のフルアルバムでは私の世界がもっと広がってて・・・うん。ひとつの自分のドアみたいな感じで。ここを通過して先に広がっているモノを聴いて欲しいですね。


Interviewer:Tetsuo Hiraga

[PLANTECH - Music Data Bank 2003年03月26日]




◆『亜矢』 SPECIAL INTERVIEW 番外編 「亜矢 ライヴについて語る!」◆ (HOT EXPRESS)

-7 ROCKS ALBUM「禁じられた歌」のリリース後、"My name is..."と題したライヴイベントが東名阪であるみたいですけど。



亜矢(以下A):はい。7 ROCKS ALBUMの収録曲をメインに披露したいと思ってます。




-まだ一回もライヴで披露していない曲とかってありますよね?



A:「CHAINS」、「絆」、「アルク*ベイビーズ」はまだですね。東名阪で何やるかはまだ決めてないんですけど。でも、次のワンマンライヴは「絆」から始めたいなーと思って。




-あぁーなるほど!あと、いつも気合い全開のライヴを見させてもらってるんですけど、場所によってのやり易さの違いって亜矢さんもあるんですか?



A:ありますね。LIQUID ROOMだと心地良い広さと、音がすごい自分にはしっくり来る感じですね。会場がデカすぎても戸惑ってしまうし、小さすぎてもステージ上で自分達の音が聴こえなかったり、圧迫感があったり・・・お客さんが近いと、「あんまり見ないで・・・」って感じになっちゃう(笑)。




-5月23日には、久々のワンマンライヴがclub asiaで行われるようですが、これはかなり楽しみなんじゃないですか?



A:ですね。今回は"自分のワンマンライヴ"を身に感じたいですね。武装をしない素の自分を出したいというか、力の入り過ぎないワンマンにしたいですね。




-なるほど。あと、今後ライヴで新たに試みたいことってあります?



A:自分の大好きなアーティストとツアーとか回ってみたいですね。あと、ヨーロッパでもライヴしたい。実はドイツとかで評判が良くて、たまにBBS見ると、海外の方から書き込みがあったり。「私が作ったモノを向こうでも聴いてる人がいるんだー」と思ったら、行きたくなりまして。あとはシアトルでライヴしたいですね。




-それ見たい!いつか実現する日を楽しみにしてます!